INFOLATION

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嘆いて 嘆いて 僕らは今うねりの中を歩き回る

華金は飲まなきゃ損損だぞ☆

先輩が突然、僕にこう言った。

「今日飲みに行くぞ」

知ってる。わざわざ言われなくても知っている。なぜならこの言葉を言われるのは三日連続だからだ。

「いや、今日は止めておきましょう。肝臓やら何やらが全て死にます」

口から必死の思いで漏らした声は、道を走るクラクションの音に飛ばされた。

ひとり見上げた月は悲しみです。

 

聞こえたのか聞こえなかったのか知らないが、先輩は上機嫌で帰り道を歩く。

この先輩はカエルのような顔をしているからここではカエルと呼ぶ。

 

「なんで?だって、平日も飲みにいくようなやつがせっかくの華金に飲みに行かないのは意味分からなくない?泣き虫なやつが葬式で泣かないようなもんだよ?」

確かにそうかもしれない。その時の僕は納得してしまった。いや、もしかしたら納得したフリをしていたのかもしれない。ただ単に、いつも通り先輩のノリに合わせていただけなのかもしれない。

そして、一番の問題点は、華金ではないということだ。

いや、金曜日は金曜日なのだが、土曜日も仕事なのだ。だから華金ではないのだ。

 

焼き肉、美味すぎでは?

それから同期、5人ぐらいを連れて、夜の街に出た。

この時点で時計の針は22時を指している。

「よっしゃ、今日は華金やし焼肉でも食いに行くぞ」

どうやらこのカエルは最近華金という言葉を覚えたらしい。カエルが人間の言葉を覚えることは素晴らしい事だと思う。

 

情熱ホルモンに着くと、受付の店員に「すぐ席を片づけるので少しだけ待っておいてください」と告げられた。

カエルが突然、

じゃんけーん

と叫び出した。

びっくりした僕たちは思わずグーを出す。先輩だけパーだ。

「はいー、俺の勝ちー。奢りね。今日、負けたやつの奢りだから」

恐ろしい世のなかだ。

悲しい悲しい同期5人の戦いが始まった。

なんやかんやがあって、結局一人の敗者が決まった。

僕は、勝った。最後に出したのはパーだった。

僕は、ひとり冷えた手のひらを見たのです。

僕は、片づけられた席に座る。

僕は、メニュー表を取る。

僕は、メニュー表を先輩に見せる。

先輩は、欲しいものを次々に頼んでいった。

僕たちは、何も頼まなかった。

 

生ビールが6つ届けられた。

乾杯すると、泡は揺れる。揺れた泡は消えていく。細かい泡から順番に消えていった。消えなかった泡はカエルの口に吸い込まれていった。

一次会の終了時間、23時

お会計は12000円。6人で飲み食いした割には安い金額だ。一人2000円と考えると、なかなかコスパがいい。

実際は、一人が12000円を払うのだが。

お会計を済ませると、カエルがお金を払った同期に「ごちそうさまです」と笑顔で言っていた。

僕たちも、笑顔で同じように言っていた。

ひとり淋しい人になりにけり。

 

それから二次会として相席屋に行った。なぜ相席屋かというと、カエル曰く「いつもこのメンツで飲んだって仕方ないし、楽しくないから」だそうだ。

では、なぜ情熱ホルモンに行ったのか。なぜそもそも飲みに誘ったのか。カエルの考えることは人間には理解できない。

 

相席屋で出会った女性は、22歳と24歳だった。同期と同じ席に座った僕は、仕事の愚痴を言いまくった。

「そんな会社、やめた方がいいよ」と言われた。

22歳の新社会人に言われた僕はなぜか

「お前に何が分かるんだよ」

と言っていた。気付いたら言っていた。

「あんだけ不満言っていたのに意味分かんない」と言われた。

僕にも分からない。ただ、同い年から受けた思いやりを虚栄心が受け付けなかっただけだった。

 

そして、終電が近づいてきた24時頃、解散になった。

終電間際、いつも僕たちは裏道を走る。地元なのに、何度も利用した駅なのに、全く知らなかった道だ。社会人になってから知った道だ。信号が少ないから少しだけ早く帰れるらしい。

覚えたてのこの道 夜の明かり しらしらと

何を探しまわるのか僕にもまだわからぬまま

走り続けた。

 

目覚めたら最寄駅の3つ向こう

「おい!もう休憩時間は終わってんぞ!いつまで寝てんねん!」

確かにそう言われた気がした。飛び跳ねた僕は、それが夢だと気づく。夢の中から電車の中にワープした。

そして、最寄駅はとうに過ぎていた。

いわゆる終電寝過ごしである。

次の電車を知らせる電光掲示板は真っ暗だ。終わりだ。

無人改札をくぐると、真っ暗だった。比喩ではない。本当に真っ暗なのだ。目の前には山。車二台がやっと通れるかというほどの道路の両脇にはガードレールがある。その向こうは崖だった。

とりあえず親に連絡を、と携帯を見ると圏外だった。終わりだ。

 

どうすることもできない僕は、テンションがおかしくなっていた。

とりあえず最寄駅の方向へ歩く事にする。音楽でも聞きながら歩けば、なんとかなるだろう。

しばらく歩いていると、トンネルが現れた。トンネルに入って5分ほど歩いただろうか。未だ出口は見えない。少しだけ入口も見えなくなってきた。限界だった。

叫びながらトンネルに入ったところから飛び出た。

いや、だって明らかに出るでしょ。幽霊的なものが。もしこれが本当にあった怖い話しだったら、僕は死ぬ役目だ。それか、一生めちゃくちゃ怖い幽霊に取り憑かれる役目だ。

改札に戻ると、ベンチに一人、サラリーマンが座っていた。年齢は僕より少し上だろうか。穏やかそうな顔をしている。

思い切って声をかけた。

「このへんってタクシーいますかね」

「いませんよ。だからタクシー呼んだんです」

「えっ、電波届くんですか」

「えっ届きますよ」

auからdocomoに乗り換える決心をした瞬間だった。

「もしよかったら電話とかに僕の携帯を使ってください」

「いえ、でもそこに公衆電話があるので」

「いやいや、全然大丈夫ですよ。どうぞ」

親に電話をかけて事情を話す。感謝を伝えて電話を返すと、信じられないことを言われた

「最寄駅が○○○なんですけど、そこまでいっしょに行かないですか。タクシー代も割り勘にできますし」

「えっ!僕も最寄駅○○○です!ぜひ、よろしくお願いします」

「えっ!良かったです笑。さっきタクシー呼んだばっかりなので、1時半ぐらいにタクシー着くと思うんですけど、大丈夫ですか」

「感謝感激雨嵐です」

カエルと喋りすぎて、ギャグセンまでカエルのレベルになってしまったようだ。

30分ぐらい、その人と喋っていた。

それぞれの仕事の内容とかだった。飲み会が多くて大変だとも言い合った。どうやら向こうは、終電寝過ごしのベテランみたいだ。

不意に涙が出そうになったのは、夜空に輝く星のせいか、絶望から救われたからなのか、久しぶりに人の優しさに触れたからなのかは分からなかったし、今でもまだ分からない。

 

それからタクシーが着いて、僕たちは運ばれた。

タクシーの運転手さんが、こう言った。

「この辺ってよく出るんですよ」

やっぱりそうなのだ、歩いていくなんて無茶だった。僕の勘は間違っていなかった。

「ほら、あそこに看板があるでしょ」

その看板には、『イノシシ注意』と書かれていた。

 

○○○駅について、僕たちは降りた。

8000円だったから僕は財布から4000円を取り出した。5000円払ってもいいと思っていた。

すると、向こうは8000円をタクシーの運転手さんに支払い、帰ろうとした。

「僕、こっち方向なんで」

「え、4000円」

「あ、大丈夫です。いや、本当に大丈夫なんで。では!」

 

最寄駅から家へ歩いた。音楽プレイヤーでサカナクションアルクアラウンドを流す。

 

悩んで 僕らはまた知らない場所を知るようになる

疲れを忘れて

この地で この地で 今始まる意味を探し求め

また歩き始める


サカナクション - アルクアラウンド(MUSIC VIDEO)